女性に多い病気、甲状腺疾患 免疫機能損ね自己攻撃病気の中には性別の違いで発症率が大きく異なるケースや、薬の使い方などに差が出る場合などがある。
動悸や息切れがする、疲れやすい、イライラする、やせてしまった、皮膚がかさつく――。
こんな症状が出た場合、「仕事などで疲れているからかな」とか、中高年女性の場合は「更年期障害が始まったのかな」などと思うかもしれない。
だが、甲状腺の病気が原因で起きている可能性もある。
性ホルモン影響か
のどにある甲状腺はホルモンを分泌し、全身の細胞の働きを活発化する機能を持つ。
甲状腺ホルモンが多すぎても足りなくても様々な症状につながる。
ホルモン過剰で起こるのが「バセドウ病」。
女性の200人に1人がこの病気を持つとされ、男女比は1対4の割合で女性に多い。
患者数のピークは30歳代前半で、20歳代の発症も少なくない。
この病気では甲状腺にできる「自己抗体」という物質が甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを大量に分泌する。
ホルモンによって新陳代謝が促され、いつも運動しているのと同じ状態になり、汗を多くかくようになる。首元も腫れてくる。
過剰な働きを強いられる心臓などにも負担となる。
逆に、甲状腺ホルモンが足りないと「橋本病」を引き起こす。
自己抗体が甲状腺を破壊し、甲状腺ホルモンの分泌量を低下させる。
元気が出ない、記憶力低下、食欲不振、便秘などの症状が出る。
橋本病は特に女性の比率が高く、患者の94%を占める。
20~30人に1人の女性がこの病気を持つ。
ただ、甲状腺ホルモンが不足し治療が必要なのは約3分の1にとどまる。
この2つの病気はともに自己免疫疾患に分類される。
病原体など外敵から身を守る免疫システムがおかしくなり、自分自身を攻撃してしまう。
女性に多いのが特徴で、皮膚の異常や関節の痛みなど体に様々な症状が出る「全身性エリテマトーデス」も男女比は1対9。
「関節リウマチ」も女性が約4倍多い。
なぜ女性に自己免疫疾患が多いのか。
国立精神・神経医療研究センターの山村隆免疫研究部長によると、有力な説は次の2つだという。
一つは性ホルモンの違い。
やはり女性に多い「多発性硬化症」の動物実験で、男性ホルモンには免疫が自身に向かうのを抑える働きがあったが、女性ホルモンにはなかった。
もう一つは、性染色体にある自己免疫に関係する遺伝子の影響が疑われている。
甲状腺の病気に早めに気づくには、症状が似ている更年期障害やうつ病などと区別することが大切。
「自ら甲状腺の病気を疑い、病院で検査してもらうのがよい」と金地病院(東京・北)の山田恵美子院長は指摘する。
命の危険はない
山田院長は自己チェックシートを作成。甲状腺の腫れがなくても、「発汗増加」「手足が震える」など症状が4つあてはまればバセドウ病を疑うべきだと訴える。
また、「疲れやだるさがある」「記憶力が低下する」などの4症状があれば、橋本病の検査をするのが望ましいという。
この2つの病気とも治療薬があり命の危険を心配する必要はない。
バセドウ病は手術や放射線で細胞を死滅させる放射性ヨード療法もある。
治療法も男女に差はない。
ただ、女性に多い病気なので治療薬と妊娠・出産の関係はおさえておきたい。
バセドウ病治療で一般的に使われる「メルカゾール」は、効果が高く副作用も少ないが、妊娠初期に服用すると、まれに子供に先天異常が起きることがある。
そこで、国立成育医療研究センター母性医療診療部の荒田尚子医長らが因果関係を詳しく調査し、昨年秋に中間報告をまとめた。
妊娠初期に母親がメルカゾールを飲んだケースでは、子供85人中5人で、へそに関する異常や頭の皮膚の一部が欠損する異常がみられた。
これは従来報告があったのと同じ異常で、いずれも手術で良くなった。「メルカゾールと先天異常は関連が強く疑われる。ただ調査対象は特殊な群と考えられ、実際の発生頻度はもっと低いだろう」と荒田医長は話す。
妊娠初期のメルカゾール服用をできるだけ避けるには、医師と相談し計画的に妊娠することが大切。
基礎体温を付け妊娠に早く気づくことも重要だ。
この期間に別の薬を服用するなどの対策が取れる。
同研究センターでは「妊娠と薬情報センター」を設けており、ここに申し込めば、全国にある拠点病院で相談できる体制になっている。
橋本病でも甲状腺の機能低下が胎児に悪影響を与える恐れがあるので注意したい。
金地病院の山田院長によると、薬を普段使っていなくても、妊娠時は甲状腺の機能が少しでも下がったら、ホルモン剤を投与するという。
患者は機能低下を助長するヨードを多く含む昆布を食べ過ぎないことも大事だ。 (辻征弥)
出典 日経新聞・夕刊 2012.3.9
版権 日経新聞社
<番外編>
<東日本大震災>福島では1万6000人集結…原発反対集会
■国内外で反・脱原発集会が開かれた11日。
「『原発いらない』の声は痛恨の思いを込めた福島県民の叫び。
この声を全国の心ある人に届けるのは、県民の使命であり義務だ」。
東京電力福島第1原発事故で、深刻な被害に苦しむ福島県で開かれた集会では、呼び掛け人代表の清水修二・福島大副学長がこう訴えた。
未曽有の大災害が与えたショックは今も生々しく、各地で「原発反対」の声が上がった。
■全国最多の14基の原発が立地する福井県の敦賀市では、集会に約1200人が参加し、元原発労働者ら約15人が「原発のない未来に向かって進めていこう」などと訴えた。
被爆地・広島市では、市民ら約2000人が「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・フクシマ、ノーモア・ヒバクシャ」と声を上げて歩いた。
■昨年12月に原発建設候補地に選定された韓国東部の江原道(カンウォンド)三陟(サムチョク)市では、市民ら約1000人が建設反対集会を開いた。
主催した「誘致白紙化闘争委員会」の李光雨(イ・グァンウ)さんは「フクシマ事故があってもまだ原発は安全だと言う政府には、憤りの気持ちでいっぱいだ」と話した。
台北市では若い世代を中心に約3000人が「人類は原発を制御できない」と声を上げた。
フランスでも、約230キロ間で脱原発を訴える「人間の鎖」運動が行われ、仏国内から100団体、数千人が参加した。
<参考>
Home »Unlabelled » 女性に多い病気、甲状腺疾患 Konten Lain di Sini