甲状腺がんの主な検査
一般的には、甲状腺がんかどうかの診断は、まず触診と超音波検査が行われ、必要に応じてCT検査やMRI検査が行われることもあります。確定診断には穿刺(せんし)吸引細胞診が行われます。
●問診
甲状腺がんでは初期には自覚症状がないため、診断には甲状腺専門医による問診・視触診が重要となります。医師は現在の症状やこれまでの病歴、家族歴、過去に放射線の被曝がなかったかなどについて確認します。
●視・触診
しこりの有無と大きさ、性状(硬さや広がり)などを調べるために、医師は両手を患者さんの首の周囲を包むように当てて指で甲状腺の周辺部を押し、視診と触診を行います。首の周りのリンパ節も触診します。
一般に、しこりが2cm程度の大きさになると触診で触れるようになります。また、良性のしこりと悪性のしこりでは柔らかさや押したときの動きが違い、悪性はでこぼこして硬く、周囲の組織に広がった場合に動きにくくなるという特徴がありますが、悪性かどうかの判断は視触診ではできないため、超音波検査や穿刺吸引細胞診などを行います。
●血液検査
甲状腺がんの血液検査では、血中の甲状腺ホルモンや、がんの存在により異常値を示す腫瘍マーカーを調べます。
髄様がんでは、甲状腺ホルモンの一つで血中カルシウムに関連する「カルシトニン」と、腫瘍マーカーの「CEA」が増加します。また、乳頭がんや濾胞がんでは、血液中に「サイログロブリン」という甲状腺から分泌されるたんぱく質の中にだけある物質が増加します。ただし、良性の腫瘍であっても上昇することがあり、これだけでは鑑別診断に有用とはいえません。
未分化がんでは、白血球などの炎症物質が増加します。
【画像検査】
●超音波(エコー)検査
首の周囲に超音波検査具(プローブ)を当てて超音波を発振し、返ってくる反射波(エコー)を画像化して診断します。触診ではわからない小さなしこりも発見できます。所要時間は10分程度と短く、体への負担もほとんどありません。
しこりの大きさや形、位置だけでなく、悪性かどうかもほぼ判断できます。最近では、人間ドックなどで頸部血管疾患や全身の動脈硬化を調べる頸動脈超音波検査を行った際に甲状腺がんが発見されることもあります。
●CT検査
コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を照射して体の内部を描き出し、主に周辺の臓器へのがんの広がりや転移の有無を調べます。いろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影し、より詳しい情報を得ることができます。
●MRI検査
磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い磁場をかけることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化します。いろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影し、より詳しい情報を得ることができます。ただし、MRI検査は時間がかかるため、呼吸による振動で甲状腺の周辺部が動いてしまい画像がぼけることがあります。このため甲状腺の検査では必要に応じて使われます。
●シンチグラフィー
放射性ヨードを服用し、体内でヨードが放出する微量の放射線をガンマカメラという専用装置でとらえて画像にします。甲状腺のしこりの大きさや形だけでなく、がんの再発や転移があるか、甲状腺の機能はどうかなども調べることができます。