バセドウ病とは甲状腺を刺激する抗体(抗TSHレセプター抗体:TRAb)が出現し、甲状腺から大半がホルモンの分泌を増加させる、自己免疫性の疾患です。 甲状腺ホルモンが過剰に作られないようにするための治療は3つあります。 内服薬治療(抗甲状腺剤またはヨード剤の内服)、手術、アイソトープ治療です。 今回は、内服薬について説明をしたいと思います。 日本ではバセドウ病と診断した時、約80%の医師が抗甲状腺剤の内服治療を第一選択とします[図参照]。それは、すべての年齢で治療が可能であり、外来で治療ができ、どの医療機関でも入手できるからです。 現在2種類の抗甲状腺剤が日本にあります。メチマゾール(商品名:メルカゾール)、プロピルチオウラシル(商品名:チウラジール、プロパジール)です。 メチマゾールは効果が的確である印象が強く、1日1回での内服でもよいため、選択されやすい薬です。しかし、妊娠や授乳においてはプロピルチオウラシルの方が安心であるため、年齢、性別、副作用を考慮して処方します。 抗甲状腺剤は、内服すると消化管より吸収されて血液中に移行し、甲状腺に取り込まれます。そこで、新たな甲状腺ホルモンの合成を抑制します。しかし、既に甲状腺内に貯蔵されているホルモンの分泌は抑制しません。そのため蓄えられていたホルモンが血液中に出続け、甲状腺機能亢進症が内服をしてもしばらくは続きます。機能正常化までには1ヶ月から3ヶ月程度時間がかかります。内服薬が過量になると甲状腺機能低下症となり、むくみを伴う体重増加とこむらがえり、甲状腺の腫大などが認められます。甲状腺ホルモンの値をみながら、薬を適切に減量していきます。1錠以下まで減量してから中止の時期を見計らいます。内服は、場合によっては長くなることがありますが、最低2年くらい継続してください。 適切な時期に内服を中止すれば、大半の人は甲状腺機能正常を維持することができますが、残念ながら約30%は再燃してしまいます。 抗甲状腺剤には痒み、湿疹、肝機能障害、白血球減少症や無顆粒球症(細菌感染を防ぐために必要な顆粒球というものが極端に減ってしまう事)、関節痛といった副作用があります。このような副作用は内服を開始して90日以内に出現することが多いと言われていますので、内服を開始して3ヶ月間は2週間ごとに副作用を確認しています。 飲み忘れてしまったときは、忘れていた当日分を気づいたときに服用し、次回より通常の内服に戻すようにしてください。 但し、翌日に前日分の飲み忘れに気づいた場合は、前日分は服用せずに当日分のみを服用してください。 また、海外旅行など時差が生じる場合は、少し時間がずれても海外の時間に併せて内服をしてください。 伊藤病院 國井 葉