甲状腺の触診 : 小児科医の放射性物質に関する覚え書き

今回の原発事故ではチェルノブイリの際のようにこどもの甲状腺がんは多発しないのではないかという話もあります。それでもご心配なご両親はときおりお子さんの甲状腺を触診してみましょう。

甲状腺は首の正面の真ん中よりやや下にあり、気管の前面に羽を広げた蝶のような形をして付着しています。 甲状腺は正常では厚さが3~5mm程度の薄い臓器で、硬さは耳たぶより少し柔らかい程度です。


触診に際してはこどもの正面に対座し、両手の親指の腹でなでるように触診します。また、こどもの背方から人差し指~薬指(こどもが小さければ人差し指のみ、または人差し指~中指)を用いて行う方法もあります。


まず、 首を後方にそらして鎖骨や胸骨が触診の妨げにならないようにします。 つぎに指で喉仏(甲状軟骨)を 探します。徐々に指を下げていくと甲状軟骨下端,輪状軟骨、気管軟骨が確認できます。甲状腺峡部は気管軟骨の前に張り付いていますので、気管軟骨の上端を親指で確認できたら、その直下に甲状腺峡部が存在します。甲状腺のある部分は気管軟骨のデコボ コした感じだけではなく、そのうえに耳たぶのような柔らかい構造物が乗った感じがすると思います。これが甲状腺 です。甲状腺は両葉が甲状軟骨の側面まで達していますので, そちらに向かって輪郭を片方ずつ確認していきます。さらに 気管軟骨の両脇にある両葉の中心部分を触診します。小さなお子さんでは甲状軟骨以外の細かな構造物は把握しにくいと思いますので、甲状軟骨の位置を目安に甲状腺が存在すると思われる場所を指の腹で探っていけば良いと思います。

小さなお子さんの場は比較的早く2〜3年以内に発症するのが普通ですが、何年もたってから症状が現れることもあります。結節(腫瘤によるしこり)が存在するときは、しこりが消しゴムの硬さに触れます。結節の存在が疑われたときは、まずかかりつけ医に相談して確認してもらいましょう。

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