甲状腺の病気を誤解していませんか?

適量の甲状腺ホルモンが体の調子を支えている

何かの原因で甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても全身に変調がきて、さまざまな症状が現れます。

甲状腺のホルモンが多すぎる病気(甲状腺機能亢進症)の多くはバセドウ病です。体中の臓器の新陳代謝が活発になり過ぎるため、見た目にもイライラして落ちつきがなく、暑がりで汗も多く、動悸(どうき)があり脈拍が速く、体重は減少します。しかし、よく食べて、動き回るので、周囲の人からは重症の病気とは思われず、元気そうに見えて誤解されることもあります。この病気の症状で一般によく知られている眼球の突出はおよそ半数の人に見られるものの、全ての患者に現れるわけではありません。
治療は安静が大切で、ホルモンの生産を抑える薬を服用します。落ち着いたら放射性ヨード治療や手術を受けるのがよいでしょう。

一方、甲状腺ホルモンが少なすぎる病気(甲状腺機能低下症)の代表的な病気は慢性甲状腺炎(橋本病)による機能低下症です。新陳代謝が低下するので、寒がりで眠たがりになり、汗は少なく乾燥肌で、胃腸の動きも悪く便秘がちで、仕事をする意欲も低下します。これらの症状は長い月日をかけて、ゆっくりと進行するので、本人も家族も見逃してしまうことがあります。
治療は検査で機能低下の程度を診て、不足しているホルモンを適切に補えば、それで全てが解決されます。手術で甲状腺を切除した場合の機能低下症も適量のホルモン薬を服用すれば、甲状腺がなくても全く問題はありません。

甲状腺の病気は、発病すると一生治らないと考えている方も多いようですが、専門医による適切な治療を受ければ、決して治らない病気ではありません。ただ服薬する期間が数年に及ぶことがあり、とくに甲状腺機能低下症ではホルモン薬を一生飲み続けなくてはならないこともあります。しかし、「一生薬を飲まなくてはならない」と悲観するよりは、「おなかがすいたのでご飯を食べて元気になる」のと同じように、「不足しているホルモンを飲んで元気になる」と考えて習慣化していくのが大切です。

機能亢進症にしても、機能低下症にしても、女性の発症率は男性の数倍も高いので、「女性独特の病気だ」と考え、甲状腺の病気にかかると子どもができないのではないかと思い悩む女性が少なくないようです。これも大きな誤解の一つです。甲状腺の病気にかかったとしても、薬の服用など、専門医による適切な指導や治療を受ければ、妊娠・出産は全く問題はありません。

また、甲状腺にはほかの臓器と同様に、ばい菌による急性化膿性甲状腺炎やウイルスによる亜急性甲状腺炎、良性の腫瘤(しゅりゅう)や悪性の腫瘤(がん)もありますが、いずれの病気も女性に多発します。発病率の性差の理由はまだ明らかではないようです。

 

Blogger news

Pageviews past week

Blogroll

About