昨日参加させてもらったセミナーの内容からのご報告です。
まず甲状腺についてですが、
甲状腺は首にあり、骨/筋肉/内臓/皮膚など動物の身体の代謝を促すホルモンを分泌する、重要な器官です。
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺から過剰なホルモンが分泌される病気です。10歳以上の老齢猫で最も多く認められます。
罹患率は、老齢猫の10~20%ほどと報告されています。
猫の甲状腺機能亢進症は、人の原因として最も多い自己免疫性疾患である「バセドウ病」とは病態が異なり、次のような原因があります。
・甲状腺過形成(腫瘍と違い、正常細胞が増殖している)
・甲状腺腺腫(良性の腫瘍)
・甲状腺ガン(悪性の腫瘍)
・その他
~主な症状~
☆体重減少
☆多食
よく食べるのに、痩せてきている。これが最も多い症状です。また、その他にも下記のような症状がみられる事もあります。
・多飲多尿
・行動の変化(活動的、攻撃的、鳴き方の変化など)
・嘔吐
・下痢
・食欲低下
・呼吸促迫
・その他
これらの結果、身体に負担がかかり、心臓病、腎臓病、肝臓病などを併発し亡くなってしまう事もあります。
~治療法~
抗甲状腺薬(甲状腺ホルモン合成を阻害する)
外科手術(甲状腺摘出)
これらの治療法でも十分な効果が得られますが、抗甲状腺薬で10~30%、外科手術でも5~10%で副作用や再発などがみられる事があります。
そこで、今回新たな治療法として「低ヨウ素食」が追加されました。
甲状腺機能亢進症の猫の90%で、甲状腺機能が正常に回復します。方法は非常に簡単で、ただその食餌だけを与えるだけです。他の治療との併用も必要なく、副作用も報告されていません。
また通常の食餌に比べ、蛋白質、リン、ナトリウムなども制限されており、高齢猫に多い腎不全にも配慮されています。
注意点
・他の食餌、おやつなど多くの物にはヨウ素が含まれているため、与えてはいけません。
・複数の猫を飼っている場合にも、他の猫の食餌を一切与えてはいけません。
・甲状腺ガン(悪性腫瘍)の場合には外科手術が推奨されます。
これは、飼い主様にとっても病気になった猫にとっても、治療のストレスから解放される革命的な治療法です。ぜひ当院でも治療の選択肢の一つとして、今後使っていきたいと思います。
中村